再生前や合間に広告こそ流れるものの、曲のスキップ回数には制限がなく、気に入った楽曲を好きなだけ楽しめるのも嬉しいところです。無料版の範疇でもそれなりに自由度が高いYouTube Music。その魅力について、SpotifyやApple Musicなど他の音楽配信サービスと比較しつつ探っていきます。 サブスク音楽配信サービス おすすめ11本を比較まとめ【2021年最新版】

YouTube Musicとは、有料版YouTube Musicプレミアムなどとの違い

YouTube Music無料版にはCMが挿入され、ダウンロードやオフライン再生機能はない Googleが提供する「YouTube Music」は、簡単に言えば、音楽に特化したYouTubeです。Spotify(無料版)などと同様、音楽の再生前や次の曲との合間に数秒から20秒程度の広告を再生することで、スマホやパソコンから無料で音楽や動画をストリーミング再生できます。 有料版サービス「YouTube Music Premium(プレミアム)」に加入すれば、「広告なし」「オフライン再生」「バックグラウンド再生」(画面ロック中や他のアプリ使用中も動画を再生できる)といった機能も利用でき、より快適に音楽を楽しめます(※1カ月の無料期間などもあり)。 また、このYouTube Musicプレミアムの全機能が料金内で利用でき、さらにYouTubeサービス全般で特典を受けられる有料サービス「YouTube Premium(プレミアム)」も用意されています。それぞれの違いは下表の通り。費用対効果を考えると、YouTube Premium(プレミアム)の方がお得感があります。

YouTube Musicの魅力

他の音楽配信サービスとの比較も交えながら、YouTube Musicのアドバンテージについて見ていきます。

ベーシックな機能をしっかり搭載、YouTubeユーザーは使いやすい

(左から)Spotify、YouTube Music、LINE MUSIC。いずれも類似のUIだが、操作性はそれぞれ異なる SpotifyやLINE MUSIC など他のサブスク音楽配信サービスと同様、新着やおすすめプレイリスト、チャートやオリジナルミックスがトップ画面にずらりと並ぶYouTube Music。 画面を見た印象や機能面はSpotifyに似ていますが、Spotifyにあるような「音楽フェス」や「テレビ&映画」ジャンルなどは残念ながら見当たりません。 一方で「ブラック・ライヴズ・マター」など独自の注目カテゴリも存在し、ポップやジャズ、R&Bのようなジャンルだけでなく、チルやスリープといった「ムード」検索にも優れています。 有料でも検索ジャンルの選択肢が乏しい「LINE MUSIC」や、テーマごとのプレイリストが比較的豊富に用意されている「Apple Music」などと比較しても、今聴きたい音楽と出会うための機能は十分に備わっていると言えます。

普段からよくYouTubeを使っている人なら、YouTube Musicの良さにより早く気付くかもしれません。例えば、YouTubeで登録したアーティストのチャンネルや自分で作成した楽曲動画のプレイリストはYouTube Musicにもすぐに反映されます。 音楽コンテンツに集中したいならYouTube Musicを、他の動画を楽しみたいならYouTubeを、といったように、目的に応じた横断的な楽しみ方ができるようになります。

うろ覚えでも大丈夫な「スマート検索」の検索結果に驚く

左:Apple Musicの検索結果右:YouTube Musicの検索結果 他の音楽配信サービスでも標準化しつつある「スマート検索」機能。誰が歌っているか思い出せないけれど頭から離れないCMソングなど、曲の特徴や歌詞の一部といったあいまいな情報だけでも検索できる機能ですが、YouTube Musicは他のサービスに比べてこの検索結果が一味違います。 過去にコカ・コーラのテレビCMの使用曲として採用されていた『I feel Coke ‘87』を例に出せば、短いCMの中でも印象的だった「I feel Coke」のフレーズだけを検索しても、他のサービスではオリジナルの楽曲にたどり着くことができませんでした。YouTube Musicでは関連楽曲一覧の中でも、お目当ての曲がトップ表示され、すぐに視聴することができました。 少しくらい歌詞を間違っていても探せる可能性が高そうで、このあたりはさすがGoogle、という印象です。

動画やライブもたっぷり、好きなアーティストをとことん深堀りできる

2020年にようやくサブスク解禁された米津玄師などの他、ストリーミングサービスにおける週間再生回数の歴代最高記録をもつOfficial髭男dismはライブ映像も豊富 「聴きたい曲が配信されていない」という心配が少ないのが、YouTube Music最大の魅力。 ユーザーからの動画投稿を軸足とするYouTubeの姉妹サービスだけあって、とにかくコンテンツ数が多く、SpotifyやApple Musicでは観られない楽曲動画が提供されているのが大きな強みです。

左はApple Music。YouTube Music(右)は表示される動画の総数が違う アーティストの公式ミュージックビデオのみを配信しているApple Musicと比較してみると、アーティストが配信しているYouTubeの公式チャンネルならではの動画(他のアーティストとのコラボレーション作品など)を多数視聴できることがよくわかります。 特に、YouTube上でしか観られない垂涎のライブパフォーマンスが観られるのは大きな魅力です。ただし、音質や画像の品質はコンテンツによってまちまちなので気をつけましょう。

「曲をスキップし放題」で、好きな曲を選んで聴ける

左:Spotifyの場合右:YouTube Musicはスキップに制限がない たとえばSpotifyの無料版では、アーティストのプレイリストからランダムに曲が再生される仕組みで、曲を選んで再生することができません。また、曲のスキップも1時間に6回のみと制限があります。 しかし、YouTube Musicでは指定したアルバムを最初から聴けるだけでなく、好きな曲を選んで視聴でき、さらに曲はスキップし放題。ユーザーにとってはかなり満足感が高いといえます。

左:有料版YouTube Music Premiumの場合右:無料版のYouTube Musicの場合 ただし、アップグレード版である有料のYouTube Musicプレミアムとは違い、無料版のYouTube Musicでは特定の楽曲が再生できない場合がある点には十分に注意が必要です。

視聴履歴や現在地に応じてサジェストされた曲を聴ける

左:深夜の画面右:午前中の動画 あらかじめ登録しておいた好きな歌手や、視聴履歴などに応じておすすめ曲を表示する「サジェスト機能」がYouTube Musicにも搭載されています。 他の音楽配信サービスとの違いは、ロケーション履歴を許可している場合、現在地や時間帯に応じて[ホーム]タブが動的に変化し、おすすめの曲を表示してくれる点です。 過去の視聴履歴からサジェストされるだけなく、時間帯に応じたプレイリストが一覧で見やすく表示されます。

YouTube Musicの惜しい点

YouTube Musicを使っていて気になるところや、今後の改善に期待したい部分をまとめました。

YouTube用に公開されたショートバージョンの曲なども多い

「official video」が楽曲のフルバージョンでないことも多い 無料版でも自由度が高く、魅力の多いYouTube Musicですが、惜しい点も残念ながらあります。中でも一番惜しいと感じたのは、YouTube用に作成された楽曲が少なくない点です。 サビの終盤でふいに曲が終わってしまい余韻に浸れなかったり、AメロとBメロの間にアーティストからのコメントや楽曲PRが流れたりします。今後、フルバージョンが増えていくのか様子を見守りたいところです。

一部の楽曲でしか歌詞を表示できない

聴き取りにくい部分や外国語の曲を調べるのに便利な「歌詞」機能。Spotify(無料版)には搭載されていますが、YouTube Musicで歌詞が表示されるのは一部のアーティストのみ。標準装備されているわけではありません。

ただ、関連機能として「字幕機能」の用意があります。言語は、日本語のほかに英語、中国語(簡体字)、中国語(繁体字)などが選択可能。楽曲によってはさらに多くの言語字幕が提供されています。実質の歌詞表示機能と言えるでしょう。 ただし、今のところ本機能を使えるのは、米津玄師やLiSA、YOASOBIといった一部アーティストの公式ミュージックビデオが大半です。今後対応アーティストが増えていくことに期待したいところです。

コンテンツには一般クリエーターの「歌ってみた」系も結構混ざっている

赤枠内が一般クリエイターによるコンテンツ YouTubeで音楽を検索したことのある人なら想像に難くないと思いますが、YouTube Musicでも検索結果に一般クリエイターの「歌ってみた」「弾いてみた」系の作品が並んでいます。 例えば、藤井風は10代からYouTubeに投稿している動画が話題になり、一躍脚光を浴びている人気アーティストですが、彼が過去に投稿したオリジナル動画と彼の楽曲を「歌ってみた」動画が入り混じっており、整理されていない感が否めません。 アーティストの公式楽曲から順に並ぶように設定されているとみられますが、まだまだ改善の余地があると言えそうです。

今後は音質の改良にも期待

筆者は普段Apple Music(有料)も愛用していますが、2021年6月8日から導入されたロスレスオーディオは、独自の表現で言うところの「音が立っている感覚」が味わえます。 YouTube Musicで同じ楽曲を聴き比べると、ボーカルやスネアドラムの音が薄膜をまとっているかのようにまったりと耳に入ってきて、歴然とした音質の違いに気付きます。 有料のサービスと比較するのは的外れかもしれませんが、YouTube Musicは仮にアップグレード(YouTube Musicプレミアム/YouTubeプレミアム)したとしても、現時点でこの音感覚を味わうことはできません。

アップグレードする際、iOS版とAndroid版で月額料金が大きく違う

前述のように、YouTube Musicの有料版であるYouTube Musicプレミアム、YouTubeプレミアムはいずれもiOS版とAndroid版で月額料金が大きく違います。

左:ウェブサイトから登録する場合右:iOSアプリ版から登録する場合 iPhoneやiPadユーザーの場合、iOS版YouTubeアプリからiTunes経由でアップグレードするのではなく、ウェブ経由での登録が断然おすすめです。登録方法による月額料金の違いを事前に把握しておかないといけないのは、デメリットの一つと言えるかもしれません。

まとめ

無料なので広告こそ流れますが、「聴けない曲が少なく、嫌な曲は何回でもスキップできる」ことで視聴時のストレスが少ないのは、YouTube Musicのいいところです。 もちろん、YouTube向けのショートバージョンの楽曲があったり、音質や画質が低いコンテンツが含まれたりと、楽曲の完全版のみを楽しめるわけはありませんが、少なくとも2年前より大幅に状況は改善されています。 高品質な音楽体験以外はしたくないという人には向きませんが、ストレスの少ない、無料の音楽ストリーミングサービスを検討している人にはおすすめです。

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